騎士リーナの失敗
 どこまでも続く大草原。騎士リーナは白馬で走り続けていた。
 (早く・・・・はやく・・・・。ああ、もう、もっとはやく走りなさいよ!)
 馬をうまく操っていたがそれでも焦っているようだった。なぜ、彼女は焦っているのだろうか?
 彼女が走っていたのはゼバルト王国でも僻地の方。田舎で宿や休憩地も少なく長旅にはなっていた。しかし、あらかじめ、十分な水と食糧を用意しておいた。予想以上の気温で水は多く飲んでいたがまだ十分残ってはいる。
 (早く・・・・うう、振動が膀胱に響く・・・。)
 彼女は強い尿意を催していたのだ。僻地であるため、トイレらしき施設は全く見当たらない。人通りは全くといっていいほどないため、時々草むら等で用を足してはいたが、何もない大草原が続くここでは流石に憚られた。
 (うう、もう少しだと思うのだが・・・・。)
 そのとき、彼女の前に森が見えてきた。
 (ああ、あそこだ。あの森の近くにトイレ・・・いや、村があるはずだ。)
 リーナの険しい表情が少し和らいだ。だが、排尿できるという安心感が尿道口を緩めてしまった。
 (はうううう・・・危ない危ない・・・・ちびってしまうところだった。)
 何とか腰を揺らし排尿欲求を押しとめた。森の近くの村の建物が見え、それは少しずつ大きくなっていった。そして、遂に村人まで確認できるようになった。
 (あの、女の子に聞いてみよう。しかし、同性とはいえいきなりトイレというのは・・・・まず、宿屋に泊まろう。そして、そこで借りればいい。)
 「こんにちは。ここはザバザバ村ですね?」
 「あ、どうもこんにちは。そうですよ。ようこそ、ザバザバ村へ。旅の戦士の方ですか!?」
 「ああ、そうだ。宿屋で休みたいのだがどこにありますか?」
 「え、ええとお・・・・今はありません。」
 (ええ!?どういうこと?)
 「去年まではあったんですけど田舎で来客が少ない村なので、経営が難しかったらしく今はないんですよ宿屋は・・・」
 (そ・・・そんなあ・・・・。)
 どちらかというと都会出身だったリーナには想像もしていないことだった。戦士学校を卒業して間もないため、まだまだ出身地以外のことはあまり詳しくはないのだろう。
 「あ、でも、ここの村の人は旅人に部屋を貸してもいいという人が多いので村長さんに相談してみてはどうでしょうか?」
 「あ、ああ、そうする。役場はどこ?」
 リーナはまず、役場からまわることにした。
 (ま、まずい・・・本格的に切羽詰ってきた。)
 思っていたよりも小さかったため、見落としそうになったが役場を見つけた。まず、馬を入り口に繋ぐことにした。しかし、焦ってなかなか縄を結べない。
 (ああ、もうトイレは目の前なのにー。) 
 そのとき、尿意の波が襲った。必死に足をもじつかせるリーナ。しかし少しちびってしまった。
 (う、うそ・・・・漏れた?本当に急がないと・・・・。)
 なんとかむすび終え、中に入る。
(中も狭いなあ・・・。人がほとんどいない・・・・。ええっと、トイレはどこかな?)
 「おお、旅の戦士かね?ザバザバ村へようこそ。遠かったじゃろ・・・。」
 高齢で男性の村長が話しかけてきた。他に職員らしき人はいない。これも都会育ちのリーナには予想外のことだった。
 (うう、また、トイレタイムが遠のいていくー。とりあえず挨拶しないと・・・。)
 「こ、こんにちは、リーナと申します。近くの森にコボルトが住み着いたと聞き退治に来ました。」
 「おお、それはありがたい!すまないのお、役場も人手不足なもので資料は用意できていないのじゃ・・・ええと、今のところ入っている情報は・・・」
 村長は魔物に関する情報を口頭で伝え始めた・・・話は事細かで充実していたが、リーナには聞き取る余裕がなかった。
 (ああ、もういいから早くおしっこしたい・・・・。)
 「話は大体わかりました。まだまだ若い私ですが、戦士学校での成績はまずまずでしたのでその程度の魔物ならば退治してみせます!ご心配なく!」
 リーナは話をさえぎり言った。
 「そうか、そうか、それは頼もしい・・・・。さて、報酬に関する話に移ろう・・・このような不便な地にまで足を運んでくれたことを考え、なるべく多く出したいとは思うが、我が村は財政的にも少し苦しく・・・」
 「いえ、ご心配なく。自分の腕を試せ、戦いの実戦経験を積めるのであれば報酬は多少安くても問題ありません。」
 リーナは再び話を遮った。リーナは地元では有名な商人の娘で他の若手戦士よりは高価な武具を持ち生活費、交通費にも困ってはいなかった。だが、後々のことを考えると資金が多いにこしたことはない。早く排尿したいという生理的欲求の影響が大きかった。
 「それはありがたい。それではこの額でお願いしよう。これが依頼書です。」
 (ああ、やっと終わった。今度こそおしっこ・・・・。)
 だが、油断したリーナを再び尿意の波が襲った。再びちびりそうになり、たまらず後ろから左手で股間を押さえた。だが、前からでないため、うまくいかない。足をバタバタさせ、なんとか治まった。
 「むう、どうかしたかな?」  
 村長が不思議そうな顔をする。
 (ま、まずい・・・このままでは漏れそうなのがばれる・・・。)
 「い、いえ、何でもありません。それでは!」
 リーナは役場を去った。彼女は再びトイレ休憩を目前にして逃してしまったのだった。

 (も、もう!漏れそうなのにー。でも、どうしよう・・・・戦士学校なんかもなさそうだし、市場だって小規模なものでトイレなんかないだろうな・・・となると民家だけ?だめだめ、知らない人の家でいきなりおしっこさせてもらうなんて・・・・。)
 「あら、また会いましたね。役場はわかりましたか?」
 さっき道案内をしてくれた女の子だ。
 「あ、ああ、こんにちは。おかげさまでコボルト退治が決まりました・・・。」
 「そうですか。おつかれさまです。宿はどうですか?」
 「あ・・・そ、その・・・忘れていました。」
 「良かったら家にとまりませんか?父も母もぜひ、旅の話を聞きたいといっていましたので。」
 「あ、ありがとう。では泊まらせてもらおう。」
 (よ、よかったー。今度こそちゃんとトイレを借りよう・・・。)
 だが、安心感から再び尿道口が緩んでしまった。こらえきれず足踏みをはじめるが、排尿は防げず、ちびってしまった。下着にできていた小さなしみが少しずつ広がる・・・。
 「では、こっちですのでついてきてください。」
 リーナは誰も見ていないことに気付くと、パンツを持ちあげ、股間を間接的に押さえた、なんとか排尿をとめたが歩く速度はゆっくりで、リーナはじりじりした。
 (どのあたりに家があるんだろう?早くおしっこしないと・・・。うう、下着が冷たくなってきた)
 「この家です。どうぞ、おあがりください。」
 リーナは家に入った。まず、家の者に挨拶をしようとした。できることならトイレに駆け込みたかったが彼女のプライドが許さなかった。
「はじめまして、遠いところをよくいらっしゃいました・・・・コボルト退治をよろしくお願いします。」
 (お手洗いをお借りします)
 (御手洗いを貸してください)
 (お手洗いはどちらでしょうか)
 家族との挨拶の間もリーナにはうわの空だった・・・どうやってトイレを借りるかの方がずっと重要であった。 
 「それではそちらの部屋をお使いください」
 (よし、トイレを借りよう!!今しかない!今度の今度こそ本当におしっこ・・・)
 しゅううううう・・・・
 リーナは遂におちびりとはいえない程度の排尿をはじめてしまった。股間に生暖かい感覚が広がっていく・・・。 
 (はう!?本当にって・・・まだ!!まだなの!!トイレでしないと・・・)
 「あ、あのお!!」
 「はいなんでしょう」
 急いでトイレを借りようとするリーナ。だが、放尿はなかなか止まらない・・・
 「お・・・おしっこ!!おしっこさせてください!!」
 しゅああああ・・・
 (うう、止まらないよお・・・・急がないと・・・。)
 「おといれをお借りします・・・・」
 リーナはトイレを探して家中を走り回った。
 (う、うそ・・・なんで・・・なんで見つからないの・・・)
 リーナはもう、半分くらいもらしてしまっていた。家のいたるところに水で変色した床が見える。
 (せめて・・・・せめて、少しだけでもトイレで・・・。でも、もうこの家で探していないところなんて・・・。)
 そのとき少女の声がした
 「ここから家の裏庭へ!! 家のトイレは外にあるんです。」
 (外・・・そういえばそういう建物も田舎にはあると聞いた事が・・・いそがなくては・・・・・。)
 少女の声を頼りに、リーナは家の外に飛び出した。少女もトイレに向かって走り、扉を開けて待っていてくれた。
 (あ、あれは・・・・)
 リーナの目にトイレが映し出された。家の外にあるということ以外は毎日見慣れた形のトイレだ。使い方もよく知っている・・・・しかし。
 しゅうう・・・・ぴちょん。
 (ま、間に合わなかった・・・・。 
 結局、最後の一滴すらトイレですることはできなかったのだ・・・。その場にへたり込むリーナ。
 「どうしたんですか!?もう、直ぐそこですよ早くしないと・・・・」
 「もう・・・・いいのよ・・・・。全部出ちゃったの・・・・。」
 

             
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